オスとメスのお猿さんが出会う山王祭

12年に1度のロマンスを町をあげて華やかに祝いました。

2016年5月22日(日)に開かれた山王祭。とにもかくにも、まずはこちらの映像をご覧ください。

 

 

この動画は、地元の映像クリエイターであるNakashima氏に提供していただきました。おごそかに、かつにぎやかに行われた山王祭の様子がとても伝わってくる作品です。

 

映像を見ていただければ分かるように、このお祭りの主役は神様のつかいとされるお猿さんです。
お寺横の小さな祠にまつられた陶器のメスのお猿さんが小学生の担いだみこしに乗って、上有田駅近くに同じように祀られているオスのお猿さんへ会いに行きます。そこで2匹は12年振りの感動的な再会を果たすのです。ロマンスあふれる有田のお祭りです。

 

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メスのお猿さんの出発地となる会場には、のぼりや紅白の垂れ幕がはためきます。その華やかな雰囲気で、「まだ自分のことを覚えていてくれるだろうか」と久しぶりの対面に緊張する彼女を応援します。

 

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地区の人たちも、怒涛の陶器市が終わってから息つく暇もなく練習を始めたという踊りを披露して祭りを盛り上げました。まぶしいほどの豪華な衣装が印象的です。
参加する誰もが、お猿さんの晴れの日をすこしでも華やかにしようと精を出していました。

 

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地域の子供たちもかわいらしい衣装に身を包み、稚児行列に参加します。前回のお祭りが開かれた12年前には、この子達は生まれてもいないことに気付いてなんともビックリです。

 

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陶山神社の宮司さんから大事にかかえられてみこしに乗せられたメスのお猿さん。まずは屈強な青年部に担がれて敷地内を出ていきます。いよいよ出発となるのですが、12年ぶりの再会を前にして少し緊張の面持ちですね。口元をクッと結んでいます。

 

でも、後ろについているもう一匹のお猿さんが応援してくれて少しは気持ちも和らいでいるみたいです。

 

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まちへ繰り出してからは、担ぎ手を地元の小学生たちにバトンタッチ。子供たちの軽快なリズムに揺られるお猿さんたちです。昨晩は気が張ってよく寝られなかったのか、こころなしか目が半開きのよう。

 

当日は雲のない快晴で、じっとしていても日差しに照りつけられて汗がにじむような天気でした。「祭」と大きく書かれた真っ赤なうちわにあおがれた子供たちは、「きもちいい~」との歓声をあげます。

 

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参加した人々には「さげもん」がお土産として配られました。この「さげもん」はサルの姿をかたちどった縫い物で、地元の女性たちのお手製の品です。今年は山王祭と有田焼創業400年のメモリアルイヤーが重なり、このさげもんをいくつも束ねた飾り物が各家々の軒先に飾られていました。お猿さんの通り道一帯にぶらさがった「さげもん」は、祭りにカラフルな色どりを加えます。

 

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トンバイ塀の通りを抜けてから広い道路にも出ていきます。沿道で観覧するみなさんに応援されて子供たちとお猿さんはペースよく進みます。

 

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そしていよいよ、一行はオスのお猿さんの待ちぼうけている上有田駅近くの祠までやってきました。炎天下の中よく頑張りました。お猿さんの気持ちも早く早くと火照ってきていることでしょう。

 

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祭りのクライマックスということでお客さんも増えてきました。お祭りの囃子に誘われた地元の人たちも、またカメラ片手にシャッターチャンスをねらう観光客も、みんな入り交じってお猿さんの再会を待ちわびます。

 

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ついには、メスのお猿さんが宮司さんにつれられて祠の中へ入り、やっとのことでカップルが仲良く並びました。いまだ変わらない思いを確かめあって、ホッと顔がほころびます。今回も無事に出会うことができ、周りで見物する人々もみな胸をなで下ろしました。

 

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彼らの逢瀬を祝して、地酒の入った大樽も勢いよく割られ、しぶきが行き交います。お猿さんたちを隔てていた12年という時の流れもついには拭い去られ、ふたりの間にも熱い愛情が勢いよく飛び交いました。

 

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出発地の山王神社とおなじように、地域の人たちによる優雅な踊りが奉納されました。囃子にまくし立てられた会場は熱気を帯びて、盛り上がりは最高潮に達しました。

 

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しかしながら幸せな瞬間も束の間、ものの1時間もしないうちにメスはもとの神社へ帰ることとなりました。一夜をともに過ごすこともなく別れるとは、なんとも禁欲的でストイックなラブなのでしょう。LINEを使ってリアルタイムに愛を語り合えるような時代の流れに決して乗ることのない、硬派な恋愛。シビれます。

 

次に2人が会うのは2028年です。あいだに3回ものオリンピックをはさむ、と言ったらその気の遠くなるような長さが分かりやすいでしょうか。いずれにせよ、次回もどうか変わらずにふたりがアツアツの愛情を見せてくれることを願わずにはいられません。